高校現代文明論

東海大学傘下の学校は校種を問わず、「現代文明論」を学びます。本校では1年次に週2時間、2年次に週1時間、合計3時間がこの学びにあてられます。ここで、東海大学の創立者はどのような思いで学校を創ったのか、建学の精神の根幹にあたることを学びます。次に、現代の社会が抱える様々な様相を学び、それらに対する自分の考えを深めてゆくことになります。この学びの最初の時間は校長講話なのですが、今回は何と5月の末。いつもなら4月早々のはずが、だいぶ遅くなってしまいました。

体育館で椅子の間隔をあけて、集まった1年生は本当によく話を聞いています。創立者松前重義先生が、内村鑑三先生に大きな影響を受けたこと、もともとは科学者であり、逓信省に努め、ドイツ留学時にデンマークの国民高等学校に感銘をうけ、学校を創ろうと思ったこと。たった一時間で東海大学の精神を伝えることは難しいのですが、様々な角度からの話を心がけています。

その後、生徒たちは教室に戻り、講話の感想を書きます。それがドサッと届いたのは今日の朝。生徒たちが一生懸命に書いたものなので、私も一生懸命に読むことになります。A4版1枚と言っても320枚以上!読みながら、ついいろいろ考えるので結構時間がかかります。私の話のどんなところが印象深かったのかの確認や、話の組み立ての反省もしながらの作業です。

松前先生にとってのキーパースンの話から自分にとってのキーパースンを考える生徒や、松前先生が戦争の敗北を予見し懲罰召集を受けたことに関する驚きを表現する生徒、現代文明の学びは「自分はどう生きるか」につながると、しっかり主題を受け取ってくれる生徒、感想は様々です。

クラス毎にまとめられて届きます。

そんな中で私が23年前に派遣されたデンマーク体験は、驚きをもって受け止めれれています。すでにあんなに前から、水やジュースの値段には瓶代が入っていて、瓶はお店に返すと返金されること、回収されない瓶は集積所に持っていき、無色、緑、茶など、色ごとに分けて指定通りに分類する事。何より驚かれるのは、駅の改札がないことと、駐車場の自己申告。四半世紀前の話なので今もこうなのかわかりませんが、駐車場には発券機も、バーもありませんでした。全部の車のフロントガラスには時計のようなシールが貼ってあり、その針は自分で動かし、駐車開始時間を示すだけ。駐車場には何時間まで駐車できるか明示してあり、それに従って行動しているし、自己申告がベースになっているという私が驚いたことを話すと、生徒達も同様に驚いてくれます。実体験は強いなぁと思った次第。

それにしても、夏休みに2週間近く、36人の付属高校の先生達とデンマークの国民高等学校の寮に泊まり、グルントヴィ思想を学ぶ機会をいただいたこと、本当に貴重な体験でした。